マイクを向ける女性 画像:shutterstock
マイクを向ける女性 画像:shutterstock

謝罪まで15年。過去、長崎市幹部から性暴力受けた女性記者に市長が謝罪

長崎市の男性幹部(故人)から取材中に性暴力を受けたとして、報道機関の女性記者が市に損害賠償を求めていた問題で、長崎市の田上富久市長が2022年7月13日、東京都内で女性記者に謝罪した。女性記者が市を相手に起こした訴訟では、市に賠償を命じる判決が確定している。

市は検証の実施や協議に応じず

長崎新聞オンライン版の報道によると、女性記者は2007年7月、長崎原爆の日の式典に向けた取材をする中で、市原爆被爆対策部長(当時)の男性職員から性暴力を受けた。女性記者や報道機関が市に抗議し、記者は第三者委員会の設置や協議の場などを求めたが、市は応じず、女性記者は19年、市に損害賠償を求めて提訴。22年5月30日、長崎地裁が市に約1,975万円の支払いを命じ、双方とも控訴しなかったため、6月に判決が確定した。

部長だった男性は、事件の3カ月後、田上市長らから事情を聞かれた直後に死亡。自殺とみられる。また、別の幹部職員が「合意の上だった」などと虚偽の情報を広めたことについても判決は、市に二次被害を防ぐ注意義務があったとして責任を認めた。

判決を受けて、田上市長は「判決を真摯に受け止める」として控訴を断念することを表明。自らを6カ月間50%減給とし、損害賠償金と遅延損害金計約3,400万円や訴訟費用を支出するための議案を、市議会に提出した。

「長い歳月苦しませた」と謝罪

7月13日、東京都内で女性記者と面会した田上市長は「15年というあまりにも長い歳月にわたって苦しめ続け、記者として活躍する可能性を妨げた。心からおわび申し上げる」などと謝罪。加害職員について「取材協力を奇貨として職務上の立場を利用した、公務員としてあるまじき行為」と認め、二次被害を防止する注意義務があったと指摘されたことについても、「重く受け止める」と述べた。

また、市が訴訟の中で「女性にも過失はあった」と主張したことについて、田上市長は「論点を明確にするためだった。訴訟に臨む中で必要だったと理解を求めたい」と弁解した。。こうした市の主張には、市民の間から批判の声が上がっていた。

NHKオンライン版などによると、面会後、田上市長は報道陣の取材に応じ、「こうしたことが繰り返されないようにとの女性の思いを強く感じた。今後、さまざまな努力をしたい」などと述べた。

一方、女性記者はオンラインで取材に応じ「謝罪を実現してくださり本当に良かった。回復に大きく寄与すると思う。長崎市は今後、人権を一番に大切にする姿勢を持ってほしい」などと話した。