岸田文雄首相は2022年5月12日、東京都内で全国民生委員児童委員連合会会長らと車座で対話し、子育て施策について意見交換した。対話終了後、岸田首相は記者団の取材に答え、全国の市町村に「こども家庭センター」を設けて、子育て世帯への訪問事業を実施する考えを明らかにした。
「多様化、複雑化する子育てニーズに対応」と岸田首相
12日付の共同通信によると、車座対話では、民生委員や児童委員から「子育て支援拡充のため、学校との連携を強化する必要性がある」といった意見が出された。首相はその後、東京都中央区が開設している子育て交流サロンを視察した。東京都中央区の子育て交流サロンは、子育てに関する情報交換や親同士が交流する場として設けられ、無料の育児相談なども受けられる。
視察後、岸田首相は「孤独・孤立やコロナ禍などでの生活の急変もあり、子育ての悩みも多様化していることを感じた。複雑化、多様化するニーズに対応するには、官と民、NPO、学校などとの連携を考えていく必要がある」など述べた。また、国会で審議中の「こども家庭庁」設置のための法案について触れ、「法案をぜひ成立させたい。こども家庭庁がスタートした後は、全国の市町村にこども家庭センターを展開し、子育て世帯への訪問事業の新設などで子供や子育て世代への支援を充実していく」との考えを明らかにした。
組織を統合し家庭への支援を強化
こども家庭センターは、「妊産婦や子育て世帯、子供への一体的な相談支援」を目的にしており、国会で審議中の児童福祉法改正案に新設が盛り込まれている。現在各地にある「子ども家庭総合支援拠点」と「子育て世代包括支援センター」を見直して、児童や妊産婦の相談支援などを一元的に担う。
「子育て世代包括支援センター」は、母子保健法に基づき妊娠中や乳幼児の子育てについて相談を受けるのが目的で、「子ども家庭総合支援拠点」は児童福祉法に基づき、家庭での虐待や貧困などの問題に対応する。2月21日付読売新聞オンライン版によると、支援センターに比べ、支援拠点の整備が全国で進んでいないうえ、2つの機関の間で情報が共有されず、支援が届かなかった事例もあるという。このため、政府は2つを「こども家庭センター」に統合して体制を強化することにした。
センターでは、虐待、貧困、若年妊娠などの問題を抱える家庭に対する支援提供計画「サポートプラン」を作成するほか、家族の介護や世話を日常的に担う「ヤングケアラー」の支援も行うという。
こども家庭庁は2023年4月に設置される予定で、子ども家庭センターによる支援は24年度からのスタートを見込んでいる。