画像:shutterstock 英国ロンドン – 2022年2月26日:ダウニング・ストリート
画像:shutterstock 英国ロンドン – 2022年2月26日:ダウニング・ストリート

ウクライナ「ロシアに強制移送された児童は15万人以上」訴え 米誌もジェノサイドと批判

ウクライナ最高会議(国会)の人権問題担当者、デニソワ氏は2022年4月14日、ロシア軍がウクライナから強制移送した児童の数が15万人を超えたと、メッセージアプリに書き込んだ。ウクライナの国営通信ウクルインフォルムが伝えた。児童の集団移送はジェノサイドの一つにあたるとの指摘もある。

ロシア語学習の強制や不法な養子縁組も

14日付のウクルインフォルムによると、デニソワ氏は「ロシアの報道の情報によれば、すでにロシア連邦へは15万人以上のウクライナの児童が移送されている」とメッセージアプリ、テレグラムチャンネルに書き込んだ。

さらにデニソワ氏は、「ロシアのファシスト解放者たちは、ウクライナの子供たちにジェノサイドを行い続けている」と主張。ロシアの国会の上院にあたる連邦院では、ドネツィク、ルハンシク両州からロシアへと移送された子供たちにロシア語を学ばせるプログラムが提案されているという。

そのうえで、「ウクライナの子供たちが、同化とロシアの学校での教育を目的に強制的に侵略国の言語を勉強させられる。占領国政権は、ウクライナの子供たちの本質と言語を破壊し、彼らの記憶とウクライナとのあらゆるつながりを消し去ることを計画している」と訴えた。

ウクライナの外務省も同日、ロシア軍が国際法に違反する形で、ウクライナ国民を強制的に移送しているとの声明を出した。

声明でウクライナ外務省は、ロシア軍は孤児や戦争で親を失った子を含む児童をはじめ、ウクライナ国民を強制的に移送していると指摘。また、ロシア教育省は、ドネツィク、ルハンシク両州の親ロシア派勢力との間で、ウクライナ領から違法追放された子供をロシア人家庭に渡すことを認める文書に署名する意向だという。

ウクライナの国内法に基づかず、ウクライナの子供とロシア人の間で養子縁組を進めるものとみられ、同外務省は、「ロシアの行為は児童の拉致にほかならない」とし、国際社会に断固とした対応を求めている。

「児童の権利条約やジェノサイド条約に違反」と主張

米経済誌、フォーブスのオンライン日本語版(4月12日付)によると、こうしたロシアによる子供の強制移送や養子縁組は、国連条約に違反する可能性がある。

デニソワ氏は同誌に対し、国連の「児童の権利に関する条約」では「児童は国籍を取得する権利を持ち、父母を知り、その父母によって養育される権利を持つ」(第7条)、「児童が出身国内で里親または養家に託されたり、適切な方法で監護を受けたりすることができない場合において、それらの代替となる監護の手段として、国際的な養子縁組を検討することができる」(第21条b)と定められていると指摘。今回のロシアによる強制移送や不法な養子縁組はこれらに違反するとした。

また、児童を連れ去り、他の集団に強制的に移すことは、「集団殺害罪の防止および処罰に関する条約」(ジェノサイド条約)でジェノサイドの方法の一つに挙げられている。

同誌では「戦争犯罪であれ、人道に対する罪であれ、あるいはジェノサイドであれ、プーチンは正式な調査を通じて、その罪によって起訴されなければならない」と主張。「将来に起こりうる子供たちを標的とした犯罪を防ぐために重要なのは、こうした犯罪に関する正義と説明責任を追及することだ」と訴えている。