繊維業(イメージ) 画像:shutterstock
繊維業(イメージ) 画像:shutterstock

「繊維産業にとって生き残りをかけた取り組み」 日本繊維産業連盟が人権配慮のガイドラインを公表 

日本繊維産業連盟(JTF)は2022年7月28日、人権や国際基準を尊重した企業活動のための「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」を公表した。供給網(サプライチェーン)の中で、いかに強制労働などの人権問題を排し、適正な取引を確保できるかが、世界的な課題となっており、ILO駐日事務所のサポートを受けながら、中小・小規模企業を中心に必要な対応などをまとめた。

具体的な人権侵害事例を示して対策を紹介

JTFは繊維メーカーや縫製メーカー、小売業など繊維関係団体28団体と繊維産地18支部、賛助会員47社で構成されている。

ILO駐日事務所によると、ガイドラインの策定作業は2021年秋から始まり、労働分野の国連専門機関として同事務所がサポート。日本の繊維産業の特徴を踏まえながら、主に受注側となる中小・小規模企業の経営者に焦点を当てて作成した。特に縫製業では、外国人技能実習生の労働力に依存する傾向があり、実習生の勤務実態に対し法的な問題を指摘されることもある。

ガイドラインでは、強制労働や外国人労働者、賃金など、働き手の人権に関する9つの課題を指摘したうえ、外国人労働者を差別的に扱っていないか、取引は公正に行われているか、など、企業が取り組むべき対策を、200以上のチェック項目として具体的に示した。日本の企業が実際に行っている取り組みについても紹介している。

ガイドラインは8月中旬にJTFのホームページで公開される予定となっている。

外国人技能実習制度の課題解決に意欲

JTFの鎌原正直会長は28日、オンラインで記者会見し、「国際的に企業がサプライチェーン全体としてどう生きていくかとの議論の中で、人権問題は大きな課題だ」と述べた。そのうえで、「繊維産業も外国人技能実習制度の現状への認識を深めていくために総合的な対話が必要。(ガイドライン策定を)大きなきっかけにして未来につなげたい」と課題の解決に向けて意欲を示した。

また、同席したILO駐日代表の高﨑真一氏は「繊維産業にとって生き残りをかけた取り組みであることを認識し、日本における最大の人権侵害リスクである外国人技能実習制度の問題も真正面から取り上げた。画期的な内容だ」とコメントした。

TheTokyoPostは今回のガイドライン策定にもかかわった経済産業省の永澤剛生活製品課長(当時)に、ガイドライン公表に先立ちインタビューした。

長澤課長は「日本固有の人権イシューは技能実習生問題。外国人技能実習生が一部のエリアでひどい仕打ちを受けているなどと報道されている」と指摘。ガイドラインの浸透を図ることで「繊維産業全体の課題として取組み、徹底的に違反事例をなくしていきたい」と話した。