インドカルカッタ2020年 画像:shutterstock
インドカルカッタ2020年 画像:shutterstock

「共通価値を重視しアジアのサプライチェーン構築を」令和4年版通商白書で

経済産業省は2022年6月28日、2022年版の通商白書を公表した。新型コロナ感染拡大の影響に加え、ロシアのウクライナ侵攻が国際的なサプライチェーン(供給網)を混乱させ、食料やエネルギーの安全保障に悪影響を及ぼしていると指摘。今後、日本はアジアを中心に強靭なサプライチェーンの構築に取り組んでいくことが重要だと提言している。

ウクライナ情勢で世界のサプライチェーンが混乱

白書ではウクライナ情勢の世界経済に対する影響について、ロシアに対し日本など先進7カ国(G7)が中心となって大規模な経済制裁を実施しているが、中立的な姿勢を示す国も多く、世界経済が分断される懸念が強まっているなどと指摘。新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、世界中で海上輸送が停滞しているほか、航空便も旅客便の減少による貨物スペースの逼迫、運賃の高騰などでサプライチェーンの混乱が続いているとした。

こうしたことから、食料や肥料、金属・鉱物などの国際商品価格(コモディティー)が上昇しており、エネルギー安全保障や食料安全保障にも影響を及ぼしていると危機感を訴えている。特にロシアは世界1位の肥料輸出国で、新興国や途上国はロシアに肥料を依存しているため、肥料の急激な高騰が食料不足に拍車をかける恐れがある。

また、ロシアはニッケル、スポンジチタン、パラジウムなどの鉱物資源の主要産出国で、ウクライナはネオンガスの主要生産国となっている。このことも世界の工業生産に深刻な悪影響を及ぼしかねない。

日豪印でサプライチェーン強化を推進

ウクライナ情勢のような地政学リスクや、新型コロナ禍のようなパンデミックに対応するため、白書では、日本とアジアが一体となった高度なサプライチェーンの構築を図るよう提言している。サプライチェーンについては、脱炭素化や人権などの「共通価値」の観点から情報の集約、管理、分析も求められており、アジアでデータを共有できる基盤構築も必要だとしている。

日本は、インド太平洋地域のサプライチェーンの強靱化に向けて、2021年にオーストラリア、インドとともに供給網の多元化に向けた「サプライチェーン強靱化イニシアチブ」を立ち上げた。22年3月には、同地域での「サプライチェーン原則」を策定することで合意し、貿易担当相らによる共同声明も発表している。

22年3月16日の日本経済新聞オンライン版によると、サプライチェーン原則はデータ共有時に政府が関与しないなど自由なデータ流通の確保や、透明性の向上に向けて守るべき基準を設定。サプライチェーンからの強制労働の排除も盛り込めないか検討する。生産ラインの炭素排出量のデータ共有など共同事業の促進も図る。23年をめどに原則をまとめる方針だという。