画像:外務省 林芳生外相
画像:外務省 林芳生外相

ウクライナ侵攻に「西側は揺るぎない姿勢必要」林外相米紙インタビューで欧米と協調表明

林芳正外相は米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューに応じ、ロシアがウクライナに侵攻した場合、西側の民主主義国家は「揺るぎない姿勢が必要だ」と、強硬姿勢を貫くべきだとの考えを示した。2022年2月15日付のWSJ誌が報じた。

対ロシア制裁に加わる可能性に言及

WSJの記事の内容については、外務省が2月17日、ホームページに記事を掲載した。

記事によると、林外相は「仮にウクライナ国境で何らかの事態が発生する場合、その結果はアジアにおける他の誰かの計算に影響を与えるかもしれない」とした上で、「この問題については揺るぎない姿勢が必要だ」と述べ、ロシアの行動が、軍事力でアジアの現状を変更する動きを見せる中国などを勢いづかせる可能性があるとの懸念を示した。

同誌は、この発言について「日本が2014年のロシアによるクリミア併合後に比べ、欧米諸国とより緊密に連携する意思があることを、これまでで最も明確に示すもの」と指摘。ロシアとの関係を維持するため、欧米諸国に比べて弱腰だと批判された当時とは違い、日本は今回、欧米諸国と歩調を合わせるとの見方を示した。

一方で、林外相は「日本は欧米の対ロシア制裁に加わる可能性があるが、独自の措置を講じることもあり得る」と述べるにとどまり、具体策については言及しなかったという。

このほか、林外相はロシアと中国が軍事的協力関係を強めていることについて「日本に非常に近い場所で両国が演習を行うことに対し、重大な懸念を有している」と述べた。

対中国をにらんだ対応迫られる日本

日本はロシアから石油や天然ガスを輸入しているほか、第二次世界大戦で日本が無条件降伏した後にソ連(当時)が占領した北方領土4島の返還を求めている。ロシアがクリミア併合した当時は、安倍晋三首相が領土問題解決に向け、日露交渉に前向きに取り組んでいる時期だった。

日本もクリミア併合に対し、一部のロシア人やロシア系組織への制裁を行ったが、「ロシアとの関係を維持するため、制裁を限定的にした」との批判を浴びた。このため、今回は国内の研究者からも「前回とは違い、日本もG7の一員としてロシアに対する経済制裁をしっかりすべきだ」との声が上がっている。

また、ロシアのウクライナ侵攻が現実のものとなったとき、中国への影響も懸念される。同誌の記事の中で、中林美恵子・早稲田大学教授(政治学)は、「もし米国が強固で非常に強い行動を取らない場合は、中国が台湾や他の場所に対して何かしら行動できると見なすだろう」と指摘。「中国は、米国をこれ以上恐れる必要はなくなる。それは北朝鮮についても同様だ」と述べた。

欧米諸国とロシアの間で事態解決のための話し合いが続くウクライナ問題だが、日本も台湾や尖閣諸島の領有権を主張する中国の動きをにらみながらの対応が求められている。