米国で別姓のまま結婚した映画監督の想田和弘さんと映画プロデューサーの柏木規与子さんが2022年6月13日、別姓での婚姻届を東京都千代田区役所に提出したが、区役所は民法や戸籍法に違反するとして受理しなかった。想田さんと柏木さんは2018年、夫婦関係を確認する訴訟を起こし、東京地裁は2021年4月、婚姻の成立を有効としたものの、戸籍記載の地位確認は退ける判決を出している。
区役所は「民法と戸籍法に違反」と受理せず
別姓を求める夫婦らの訴訟を支援している「別姓訴訟を支える会」のホームページなどによると、想田さんと柏木さんは同日、「婚姻後の夫婦の氏」を選ぶ欄で、「妻の氏」「夫の氏」の両方にチェックを入れた婚姻届を千代田区役所に提出した。しかし、区は「夫婦は夫または妻の氏を称する」と定めた民法と、婚姻届には「夫婦が称する氏」を記載すると定めた戸籍法に違反しているとして受理しなかった。
判決で婚姻の成立が有効だとされても、戸籍に記載されなければ、夫婦関係を公的に証明する方法はない。実際に、柏木さんは、米国領事館で日本人職員に配偶者ビザの発行を拒まれた経験があるという。税務申告の際、配偶者控除を受けられないなど、夫婦関係を前提とした制度の適用を受けるのも難しい。
想田さんと柏木さんは区に婚姻届の受理命令を出すよう求める家事審判を東京家裁に申し立てる予定にしている。
婚姻届の受理求め、家裁申し立ての予定
柏木さんと想田さんは1997年、別姓婚を認めている米ニューヨーク州で結婚した。海外で結婚すると、日本の在外公館などに届ける必要があるが、日本の婚姻届では別姓を認められないため、届け出を先送りしていた。2人は、日本でも選択的夫婦別姓制度の実現が近いと考えていたという。
しかし、日本では夫婦別姓の議論が進まず、2人は18年に今回と同様、両方の氏にチェックを入れた婚姻届を千代田区役所に提出。受理されなかったため、国に対し、夫婦としての地位確認を求める訴訟を東京地裁に起こした。21年4月の東京地裁判決は、婚姻の成立自体は日本でも有効と判断したうえで、「不服があれば家裁に申し立てるのが適切」などとして訴えを退けた。
区から婚姻届の不受理証明書を受け取った想田さんと柏木さんは同日、記者会見を行い、弁護士ドットコムニュースが会見の動画を公開した。
会見で想田さんは「裁判で婚姻は成立しているとされたにもかかわらず、届け出が受理されなかった。これによって日本の法律に矛盾があることが確認されたと思う。この矛盾を正してほしい」などと訴えた。また、妻の柏木さんは「がっかりした。きっとこうなるだろうと思っていた」などと話した。