ロシアによるウクライナ侵攻について、ウクライナのハンナ・マリャール国防次官は2022年5月11日の記者会見で「現在の戦争の第1段階で、ロシアは定めた目的を一つも達成できず、ウクライナの勝利で終結した」との見方を示した。「ロシアの敗北」については、中国の元大使までもが言及し、ロシアの苦境が日増しに色濃くなっている。
「戦争の第1段階に勝利」とウクライナ軍幹部
ウクライナの国営通信社ウクルインフォルムによると、マリャール次官は会見で「戦争は新たな局面に移行している。敵は予定とは異なり、3日かけても2か月かけてもウクライナを倒せず、5月9日までにも倒せなかった。第2局面に移行しており、キーウの防衛が分水嶺となった」と現状を分析した。
そのうえで、ロシア軍は第1段階に精鋭部隊を投入し、キーウ方面の戦闘にはロシア特殊作戦軍、空挺軍、海兵隊から構成される約24の大隊戦術群が結集したが、多くの人員と機材を失ったと指摘。「ウクライナ軍は敵に絶対的な被害をもたらし、第1局面はウクライナ軍の勝利で終結した」と主張した。
ウクライナ軍は5月10日、東部ハリコフ州の4集落を奪還し、現地を占拠していたロシア軍部隊がロシア国内に撤退したと発表するなど、5月5日に「反攻作戦を開始した」と表明した後、戦果を強調している。
中国の元大使までもが「ロシアの敗北は時間の問題」と
また中国でも、高玉生・元駐ウクライナ大使がウクライナ問題に関して「ロシアの敗戦は時間の問題だ」と論評したが、中国のインターネット上で関連記事が削除されるという出来事があったという。
米国の中国語メディア、チャイナデジタルタイムズなどの報道によると、高氏は非公開のオンラインセミナーで講演。「現代の戦争は、軍事、経済、政治、外交、世論、プロパガンダ、諜報、情報など多くの分野に及ぶハイブリッド戦争になる」と指摘したうで、「ロシアは戦場で劣勢なだけでなく、他の領域では既に敗北している。ロシアが最終的に敗北するのは時間の問題だ」との見方を示した。
講演内容はいったんインターネット上で公開された後、間もなく関連記事を含めて削除された。各メディアは、ロシア寄りの姿勢を維持する中国政府の立場とは異なる内容だったためと報じている。中国国内でも「ロシアの敗北」が論じられるあたり、プーチン大統領の立場もかなり苦しくなってきたといえそうだ。
ロシア軍が地上戦力の3分の1を消失との分析も
「ロシアの敗北」を指摘する声は、ウクライナ国内だけでなく、西側諸国などからも上がっている。
英国のウォレス国防相は5月9日、ロンドンで講演し、ロシアのウクライナ侵攻を「違法で無意味で、自滅的な侵略」と断じたうえで、「プーチン大統領と側近、将軍たちは77年前のファシズムや専制の生き写しであり、前世紀の全体主義体制の誤りを繰り返している」と非難した。
この日は、ロシアにとって対ドイツ戦勝記念日にあたり、ロシア国内では式典が行われ、プーチン氏が演説したが、ウォレス国防相は「プーチン大統領らに『勝利の日』はあり得ず、ウクライナでの不名誉と確実な敗北があるだけだ」と述べた。
5月15日には、英国防省が「ロシアは2月に投入した地上戦力の3分の1を失った可能性がある」と発表した。また、ドンバス地方でも勢いが失われ、計画より大幅な遅れが見られるとした。