日本政府は2022年5月10日、ウクライナに侵略を続けるロシアに対する追加制裁を閣議了解した。資産凍結の対象にミハイル・ミシュスチン露首相など141人を加えたほか、造船所や研究機関など71団体への輸出を全面的に禁じる。相次ぐ西側諸国の制裁で、ロシア軍が疲弊しているとの指摘もある。
先端技術が使われた製品も輸出禁止
各メディアの報道によると、制裁の対象となった141人のうち8人はミシュスチン露首相やすでに対象になっている富豪の親族らプーチン政権の関係者。133人はウクライナ東部を実効支配している親ロシア派の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の関係者だという。ロシアの侵略以来、日本政府は資産凍結の対象を拡大しており、ロシアの政権関係者は507人、ドネツクとルガンスクの関係者が253人になった。
輸出を禁じられた71団体は造船や通信機器製造の企業、研究機関などで、禁輸の対象となる企業などは201団体となった。また、量子コンピューターなど先端技術が使われた物品の輸出も禁止する。
松野博一官房長官は10日午前の閣議後の記者会見で「ロシアによる非道かつ残虐な行為を厳しく非難する」としたうえで、「G7の結束が何よりも重要なときで、ロシア産石油の原則禁輸措置もとる。引続きG7をはじめとする国際社会と連携していく」と述べた。
「5月にもロシアの軍事資源が枯渇」の見方も
西側諸国によるロシアに対する制裁措置が続く中、時事通信は10日付オンライン版で、ロシア軍の疲弊が鮮明になっているとの英国などの見方を伝えた。
時事通信によると、英国防省は2日、ロシアが侵攻開始時に投入した兵力のうち、空挺部隊を含む精鋭部隊など4分の1以上が「戦闘不能」になった可能性が高いとの分析結果を公表した。その背景には、ウクライナ軍の反撃のほか、ロシア軍の補給の不備、戦術ミス、訓練不足など複数の要因があり、軍需品の不足で十分な補給ができていないことも大きいという。
ロシアはミサイル製造に必要な半導体などを外国から調達していたが、輸出規制など各国の制裁によって入手が難しくなっている。英軍制服組トップのラダキン国防参謀長は、5日の英テレビのインタビューで、プーチン大統領が軍に物資を供給するための厳しい「補給戦争」に直面している、などと話した。
また、時事通信の取材に西側情報筋が「ロシアでは兵器や燃料など物資の生産が、需要に全く追いついていないようだ」と指摘。「(ロシア国内の)軍需関連工場の稼働率は平時より低い。戦車が故障しても(修理に必要な)部品を十分に生産できていない」との見方を示した。ロシアが現在の規模の戦闘を続けた場合、5月中か6月に軍事資源が枯渇するとの分析もあるという。