人生100年時代の家族のありかたについて課題を整理する内閣府男女共同参画局の「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」の議論内容が批判を浴びている。恋愛弱者の男性を支援するために、教育に告白や「壁ドン」練習を組み込んではどうか ——。そんな提案に「セクハラ」「暴力」といった声が上がり、「税金を使って議論することか」との呆れ声も聞こえる。
「恋愛弱者」への支援を教育に?
同研究会は未婚・単身世帯の増加や平均初婚年齢の上昇、離婚件数の増加など家族の姿が大きく変化していることを受け、どのような課題が生じ、今後生じる可能性があるかを把握するために、2021年3月に発足した。山田昌弘中央大学文学部教授を座長に6人の有識者で構成されており、これまで11回の会合を開いた。
2022年4月7日に開催された第11回会合では、研究会メンバーの小林盾・成蹊大学文学部教授が、「豊かで幸せな人生100年時代に向けた,恋愛の役割はなにか:恋愛格差社会における支援の未来形」と題して報告した。
ところが、研究会のホームページで公開された小林教授の提出資料が批判を呼ぶことになった。資料には「男女ともハンサム・美人ほど恋愛経験豊か」という調査結果が示され、「男性は80キロ、女性なら60キロ超えたら、もう恋愛の資格ないでしょ」という「キャバクラ嬢」のインタビューも紹介されていた。さらに「恋愛経験がライフチャンスを広げる」とする一方で、「恋愛チャンスに格差がある」として「恋愛弱者」にもチャンスを平等化するために「恋愛支援」が必要かもしれないと提案。支援の方法として「壁ドン・告白・プロポーズの練習、恋愛ゼミ」を教育に取り入れることを一例に挙げた。
「必要なのは結婚しやすい環境の整備」との批判も
小林教授の資料の内容について、Twitterなどでは、多くの批判の声があがっている。オンライン経済メディア「ビジネスインサイダー」によると、きっかけとなったのは、モンタナ州立大学教員の山口智美さんのツイートだという。
山口さんは4月8日、「『壁ドンの練習』なんてものが教育現場に組み込まれてしまい、強制的にいやでもそんな練習をやらされるなんてことになったら目も当てられない」と批判。これを受けて、「税金をかけて研究することか」といった声が相次いだ。
Twitterの中には、「『壁ドン』練習を教育に組み込むなどという暴力が提案される内閣府の研究会。官製婚活しかり、政府がすべきは結婚子育てしやすい環境整備のはずなのに、異性愛が前提の「結婚しろ」圧力、セクハラが推奨。同性婚などは認められず、一方で異性愛は「壁ドン」で支援って」と議論の方向性が間違っているとの指摘もある。
また、「『壁ドンは相手をキュンとさせる』という間違った認識が広まっている危険を感じた。全ての人に通用すると思ったら大間違い。恐怖を感じる人だっている」と壁ドンは相手を威圧することもあるとのツイートもあった。
「独身研究家」でコラムニストの荒川和久さんはヤフーニュースにコメントし、「未婚化は『結婚したいのにできない不本意未婚』と結婚するつもりのない『選択的非婚』がある。前者の不本意未婚は若者のうちに結婚したかったのにできない問題であり、これは経済的要因が大きく影響している」と指摘。「必要なのは『壁ドンの練習』ではなく、若者が若者のうちに大いに恋をして、若者のうちに結婚してもいいと思える社会環境作りの方でしょう」としている。