イスラム主義勢力タリバンの支配下にあるアフガニスタンからの出国を希望する元留学生の支援活動を行っている東京農工大の有志グループが2022年4月13日、3月と4月に1人ずつの元留学生が家族とともに日本に入国したと公表した。1月にも1人の元留学生が入国している。
タリバンの政権掌握で夢破れ、厳しい生活に
東京農工大は2002年、アフガニスタンのカブール大学と日本の大学では初の連携協定を結び、多くの留学生を受け入れてきた。留学生らの多くは農学部で、アフガニスタンで多く栽培されているコムギの干ばつに強い品種の改良やイネの多収栽培、畑や水田の灌漑法、害虫防除、家畜生産、国立公園や河川の管理などを学び、帰国後は、カブール大学や教育機関、試験研究機関などで活躍していたという。
ところが、21年8月のアフガニスタンからの米軍撤退と、その後のタリバンによる政権掌握によって、留学生らは職を失い、厳しい生活を余儀なくされるようになった。8月の米軍撤退以降、留学生を始動した教員らのもとには、命の危険が迫っていることを訴え、救出を求めるメールが届くようになった。
このため、元指導教員ら有志グループは21年9月、オンライン署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」で、日本の総理大臣や外務省などに対し、元留学生の救出を求めるキャンペーンを立ち上げた。
グループでは、救出の対象を大使館やJICA関係者だけでなく、元留学生にも対象を広げるよう求め、署名への協力を呼びかけている。署名への賛同者は4月14日現在で約4万2,000人。
元留学生の早急な救出を訴え
キャンペーンサイトによると、母国の農業の発展を夢見て働いていた多くの元留学生が夢と希望を失い、困窮した生活を送っている。元指導教員のもとに届くメールには、食料不足や物価高騰への不安や、大学構内で無差別テロが発生するなどして学生や教員が大学に近づけない状況であること、給与の未払いが数カ月続いていることなどがつづられているという。
そのうちの一人で、20年に帰国した元留学生は、日本で学んだことを生かして温暖化による砂漠化、干ばつによる飢餓をなくし、アフガニスタンの農業を発展させようと大学の教育研究の仕事に就いたばかりだった。
有志グループは、「アフガニスタンでは、治安の悪化、食料不安が起こっており、さらに状況が悪化することが懸念される。早急に安全な救出を図ってほしい。救出後は、日本での仕事や生活面でのサポート、可能であれば、将来、祖国に戻る際に役立つよう災害復興などの仕事に就けるよう支援してほしい」などと訴えている。