画像:shutterstock フィンランドとスウェーデンの国旗
画像:shutterstock フィンランドとスウェーデンの国旗

NATO拡大を阻止したいロシアの行動が北欧2国をNATOに近づける皮肉

紛争地に武器を送らないという原則を守ってきた北欧フィンランドとスウェーデンが、ロシアによるウクライナ侵攻という事態を受けて、ウクライナに武器を供与するという「歴史的決断」をした。

フィンランドでは初めて過半数がNATO加盟に賛成

3月2日付けのAP通信によると、スウェーデンは対戦車兵器5000基やヘルメット、防護具を、フィンランドは2500丁のライフル、弾薬、対戦車兵器1500基をウクライナに送ることを発表した。スウェーデンにとってこれは、1939年の冬戦争でソ連の侵攻に対抗するフィンランドに軍備支援を送って以来のことだという。

両国はEU(欧州連合)の加盟国であり、冷戦終結後の1990年代半ばからNATO(北大西洋条約機構)の「平和のためのパートナーシップ」活動に参加しているが、公式には今も「非同盟」の立場を守っている。

だが、ロシアがウクライナに侵攻したあと、両国内ではロシアの脅威から身を守るためにNATO加盟を検討すべきだという世論が高まり、加盟の是非を問う国民投票を求めるのに必要な5万筆の署名はわずか1週間足らずで集められた。国営テレビYLEの世論調査によれば、初めてフィンランド人の過半数(53%)がNATO加盟に賛成だと回答した。

同様に、スウェーデンでも41%が加盟に賛成であると国営テレビSVTが報じている。

これに対して、ロシア外務省は、もしも北欧の国々がNATOに加わるようなことがあれば、「軍事的、政治的に深刻な影響が及ぶだろう」と警告している。

https://www.france24.com/en/live-news/20220301-ukraine-war-brings-sweden-finland-even-closer-to-nato

スウェーデン・フィンランドのNATO加盟はあり得るのか?

「Politics Today」で、スウェーデン・ウプサラ大学ロシア・ユーラシア研究所研究員のグレッグ・シモンズは、「ロシアーウクライナ戦争のなか、スウェーデン・フィンランド両国のNATO加盟はあり得るのか?」と題して考察を掲げている。

スウェーデンは「中立」と言いながらも、冬戦争ではフィンランドに武器を送ったり、1946年にはバルト三国の市民や兵士をソ連に強制移送するなど、東西の狭間で難しい舵取りを余儀なくされてきた。それが冷戦が終わり、21世紀に入ってよりNATO寄りの姿勢を強めた背景には、2014年2月のロシアによるクリミア半島侵攻や、同年10月にストックホルム近海で「ロシアの潜水艦」の活動が報じられたことで、人々がロシアの脅威を感じるようになったことがあるという。

しかし、両国がNATO加盟に向けてすぐに動くとは考えにくいとシモンズは書く。ロシアとの関係が「冷たい友情」である限り、比較的安定的な関係は保たれるが、もしもNATO加盟に向けた手続きを始めたりすれば、ロシアの目には明らかな敵対行為と映るからだ。つまるところ、集団的安全保障を求めてNATOに加わろうとすれば、招かれる結果は「集団的不安定」である、と。

ウクライナに武器を供与するというスウェーデンとフィンランド両国の歴史的決断は、ロシアの行動にどのような影響を及ぼすのか。ウクライナ侵攻のもうひとつの重要な側面として注視していかなければならない。

https://politicstoday.org/will-sweden-and-finland-join-nato-amid-the-russia-ukraine-war/